代表からの挨拶

 現在日本の図書館司書は年間1万人を超す有資格者が誕生する一方、正規職員として活躍できるのは年間約100名程度というのが現状です。我が国で図書館司書の正規職員を目指そうものなら、志望者は弁護士資格を得ることよりも大変な事なのです。さらに各公共図書館及び大学図書館は民間請負、職員総パート化、アルバイト化、派遣社員化が進んでおり専門職制度として消滅の危機にあるといっても過言ではありません。そのアルバイトや派遣ですら大変狭き門なのが実情です。そして肉体労働、単純作業化、人員削減によって待遇は悪化する一方です。もちろん、公的サービスも劣化の一途です。

  一方、小・中学校図書館では半無人化のままが現状です。週2~3日、1日5時間の学校司書パートが実質的に管理しております。高校図書館はかつては正規職員がちゃんと管理しておりましたが、現在では代わりにパートタイムや派遣社員に切り替えたため、正職員がいる図書館が減らされ、半無人化が進行しているのが現状です。

  たしかに学校図書館司書教諭職は学校図書館法上2003(平成15)年から12学級以上持つ学校では必置規定となりましたが、あくまでも学校図書館司書教諭というのは兼任でございまして担任や教科、部活動と兼務しながら行うのが実情です。このため「充て職司書教諭」と呼ばれており、実態は学校図書館業務にほとんど取りかかれない「名ばかり専門職」なのが実情です。また任命制でいつ解除されるかもわからない任用資格なのが学校図書館司書教諭職の実情です。実際の学校図書館はほとんどが非正規職員であろう学校司書職が運営を行っております。

  さらに我が国は点字図書館および点字図書も圧倒的に不足しております。このため視覚障害者はもちろんのこと、言語発達障害者向けや聴覚障害者向けのDAISYソフトは大幅に不足しております。2016(平成28)年現在、DAISY図書はわずか全国12万点ほどです。新刊図書は我が国では例年8万冊程度の刊行ですから視覚障害者は読みたい本がまったく読めない状況にあるということになります。本当に必要とされている分野には人材も機器も投資されていないのです。

 「視覚障害者が本を読みたいのなら電子書籍用リーダーに自動音訳ソフト(俗にいう読み上げソフト)を入れればいいではないか」という声もありますが、我が国においてこの声はかなり現実的ではありません。なぜならせっかく電子書籍として刊行したものについても、自動音訳設定が著作権上不可となっている電子書籍が我が国には残念ながら多数ございます。さらに電子書籍の約80%が漫画なのです。ですので、一般書籍はほとんど電子書籍化されていないのが現実です。また視覚障害者が長時間機械音声を聞き続けると精神に支障をきたします。これは実際に目隠ししたうえで体験するとわかると思いますが機械音声というのは生の声と違い、長期間聞くと視覚障害者に大変肉体・精神ともに負担をかけるものなのです。そして本来吹き込み作業ほど人手を必要とするのですがボランティア頼みが実情で高度なスキルは身につきません。このため我が国では特にマルチメディアDAISY図書が絶望的な僅少状況にございます。

 

 つまり、我が国の図書館界は需要と供給の部分がまったくマッチしていないのです。

 

 そこでこの日本の図書館の状況を打破すべく日本図書館開発を私は設立する決意にいたりました。主なミッションは4つあります。1つは言語リハビリ図書館の普及、1つはDAISY図書および音訳ファイルの普及です。1つはNDCでは分類できない事象に対して十進分類を開発し、利用者及び司書の役に立てる事、最後は図書館司書職需要の活性化です。うちDAISY図書制作はNPO法人か自治体か社会福祉法人でないと現行法では不可能です。よっていずれは関連会社設立にあたって、NPO法人か社会福祉法人格を得ることを目指します。これにより多数の図書館司書職の需要を増やし、需要と供給の一致を目指し、図書館が真の意味で社会奉仕できる存在になるよう全力を尽くしてまいります。

  当初の目標は財務の安定と株式会社化とオフィスの独立です。それまでは個人事業として活動いたします。これからの日本図書館開発にぜひご期待ください。

 

代表 鯨岡 真一(図書館司書有資格者)